英検1級Reading問題頻出テーマ「生物」に関する基礎知識の整理 — DNA、遺伝子、ゲノムの違いは? —

目次

本日は、英検1級Reading問題で毎年扱われる「生物」に関する基礎知識を整理します。もちろん、ここに掲載させていただきます内容で十分というわけではありませんが、基本の確認にご利用いただければと思います。

1 生命の起源

     

1-1. 自然発生説とパスツールの実験

自然発生説とは、生物は既存の物質から生まれるという考え方。例として、「ウナギは水底の泥から発生する」というものがある。17世紀までは支配的な説であった。

フランスの細菌学者ルイ・パスツールは、細菌の進入を遮断した環境では肉汁は腐らないことを実験で示し、あらゆる生物は自然には発生しないことを証明した。

      

1-2. 化学進化説とミラーの実験

「無機物から有機物ができ、有機物から生物が発生した」というのが化学進化説であり、現在最も有力な説である。

アメリカの化学者スタンリー・ミラーは、水蒸気を用いて循環させた各種のガスに、カミナリを想定した6万ボルトの放電をすることで、生命のもととなるアミノ酸を発生させることに成功し、無機物から有機物が発生することを証明した。

     

1-3. 最初の生命

化石として残っている最古の生物は約37億年前のシアノバクテリア(藍藻)である。現在も近縁種が生存している。これより古い生命体は痕跡のみが発見されている。詳細不明であるが、「古細菌」に近い生物であったと推測されている。

    

1-4. シアノバクテリア

シアノバクテリアは、光合成をする単細胞の原核生物である。光合成は、太陽の光エネルギーと二酸化炭素と水を使って、生物の活動エネルギーになる炭水化物を作り出す化学反応である。この時、副産物として酸素も生成される。

光合成能力を入手したことで、生物は太陽光という無限大のエネルギー源を得、後の爆発的な生命体の増加につながった。

      

1-5. 酸素と嫌気性生物

人間を含む、多くの生物の祖先は、酸素を毒とする嫌気性生物であった。そのため、シアノバクテリアが光合成によって作り出す酸素は生命を脅かす猛毒であった。現在でも酸素には生物に対する毒性があり、過剰に取り込めば死に至ることもある。

シアノバクテリアの繁栄は、地球の大気中の酸素を激増させ、多くの生命体に絶滅の危機をもたらした。その中、DNAを守る防護壁である核を獲得した生物が現れ、真核生物として生き残った。これらが動植物の共通の祖先である。

    

1-6 ミトコンドリアと好気性生物

シアノバクテリアが地球にもたらした酸素により、真核生物の他に、酸素を使ってエネルギーを取り出すことができる好気性細菌も現れた。これがミトコンドリアの祖先と考えられている。

ミトコンドリアは、酸素を使って糖を分解し、効率的にエネルギーを取り出すことができる。現在の殆どの生物の細胞内に存在する。ミトコンドリアは独自のDNAを持つことから、もとは独立した生物であったのが、別の生物の細胞に取り込まれて共生するようになったと考えられている。

    

1-7 DNA、タンパク質、RNAワールド仮説

全ての生物はタンパク質とDNAを持っているため、生命誕生以前の無機物しかなかった地球上で、タンパク質とDNAが生成されたと考えられる。

タンパク質生成には二説ある。地球に衝突した隕石に含まれていた炭素や窒素からアミノ酸(タンパク質のもと)が合成されたという説と、隕石に付着していたアミノ酸が結合してタンパク質ができたという説である。

DNA生成について未解明であるが、DNAの材料である塩基が隕石に含まれていて、それが地球に降ってきたという説が有力である。

アミノ酸がタンパク質になるためには、DNAとRNAが必要である。このため、DNAよりも前にRNAが誕生したという説が有力であり、これをRNAワールド仮説という。

RNAからDNAができることはレトロウイルスの発見によって証明されている。

    

2生命の進化

2-1単細胞から多細胞へ

多細胞生物が登場したのは約10億年前である。多細胞化することにより、大型化し、捕食しやすく、またされにくくなった。細胞の分化、特に生殖細胞を獲得したのが最大のメリットである。多細胞生物の親子は異なるDNAを持つため、同種内でも多様化することができ、環境変化への対応力が高まる。

    

2-2共生

嫌気性生物とミトコンドリアの関係のように、共生は生物を劇的に進化させる要素のひとつである。

植物が空気中の窒素から窒素化合物を生成し栄養とすることができる能力は、根粒菌などの細菌類との共生から獲得されたものである。

    

2-3カンブリア爆発

カンブリア紀初期(約5億4200万年前~5億3000万年前)に、生物種の数が30種程度から約一万種に激増した。この現象をカンブリア爆発という。

実際には、DNA研究により、カンブリア紀初期よりも3億年前から生物の多様化は起こっていたことが分かっている。

カンブリア紀以前の生物の多くは軟体性で、化石が残りにくいのに対して、カンブリア紀の動物は外骨格を持つものが多く、多くの化石が残っている。このため、カンブリア紀に突然、生物種が激増したように見えるのである。

    

2-4生物の陸上浸出

植物によって大気中の酸素が増加すると、オゾン層が形成され、太陽からの紫外線が弱まり、地上でも生物が生きられる環境が生まれた。

最初に上陸したのは緑藻類であり、後にコケ植物、シダ植物へと進化した。次に上陸したのが、陸上でも呼吸ができ、体が軽く重力の影響が少ない節足動物と昆虫類である。

脊椎動物で最初に上陸したのは魚類である。肺と足を獲得し、陸上生活に順応するようになった。最古の四肢動物はエルギネルペトンとされている。

     

2-5大量絶滅と回復

生命誕生以来、何度も大量絶滅と、それまで以上の多様性を伴う回復が起きている。

オルビドス紀末(約4億4400万年前)には、生物種の85%が絶滅した。氷河期による海の後退と、超新星爆発による大量のガンマ線が原因とされている。

デボン紀後期(約3億4400万年前)には、生物種の82%が死滅した。陸上進出した植物が二酸化炭素を大量消費したことによる寒冷化が原因とされている。

ペルム紀末(約2億5000万年前)には、生物種の90-95%が絶滅した。大陸の衝突による火山活動の激化、火山の大噴火が原因とされている。

    

3.DNA・遺伝子・ゲノムの違いは何か?

3-1 DNA

ディオキシリボ核酸という「物質」。細胞の核の中に存在する。遺伝子、ゲノムという「情報」を格納している。

3-2 遺伝子

タンパク質(筋肉、内臓、血液など、生物の体の主要部分)の設計図となる情報。DNA全体の約1.5%が遺伝子。

3-3 ゲノム

遺伝子もそうでないものも含めた遺伝情報全体。DNAに格納されている。

   

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